アウトバウンド営業の戦略の立て方|売上目標から逆算してターゲットリストを設計する

「新規開拓のために営業リストを作って、テレアポやメールを始めたが、アポイントにつながらない」「そもそも、どの市場の、何社にアプローチすればよいのかが決まっていない」「売上目標はあるが、その達成に何件の活動が必要なのか、分からない」——アウトバウンド営業に取り組む企業では、こうした悩みがよく聞かれます。
営業リストの作り方の記事は数多くありますが、リストを作る前に決めておくべきことは、意外と整理されていません。目標から逆算せずに、手元にある名簿を上から順に当てていくと、活動量が足りているのかも、狙いが合っているのかも、確かめようがありません。
この記事では、アウトバウンド営業の戦略を、売上目標からの逆算、市場とターゲット像の決め方、リストの優先順位の付け方、アプローチの設計、PDCAの回し方の順に解説します。AIで補助できることと、人が決めることの線引きも紹介します。
アウトバウンド営業の戦略とは|リストを作る前に決める4つのこと
アウトバウンド営業とは、自社から顧客候補にアプローチする営業手法です。ターゲットを自社で選べる点や、リストができればすぐに動き出せる点が、特長です。その反面、誰に、何社、どの手段で当たるのかを決めないまま始めると、活動が場当たり的になります。
リストを作る前に、次の4つを決めておきます。
1. 目標
いつまでに、いくらの新規売上が必要なのかを決めます。この数字が、あとの逆算の出発点になります。
2. 市場
どの業界、規模、地域の企業を狙うのかを決めます。市場の選び方で、受注のしやすさも、必要な活動量も、変わります。
3. ターゲット像
その市場の中で、どんな企業が自社の商品に合うのかを決めます。「理想の顧客像」を、条件として言葉にします。
4. アプローチ手段
電話、メール、DM、問い合わせフォームなど、どの手段で、どんなメッセージを届けるかを決めます。
この4つが決まっていれば、リストは「作業」になります。決まっていなければ、リストを作っても、どこに向かうのかが定まりません。
売上目標から逆算する
逆算の流れ
売上目標から、必要な活動量を求める流れは、次のとおりです。
売上目標 → 必要な受注件数 → 必要な商談数 → 必要な接触数 → 必要なアプローチ数(対象の社数)
各段階で、前の段階に変わる確率(転換率)を使って、さかのぼって計算します。
計算の例(仮の数字です)
次の数字は、説明のための仮の数字です。転換率は、自社の実績に置き換えて計算してください。
| 項目 | 仮の数字 | 計算 |
|---|---|---|
| 年間の新規売上目標 | 2,400万円 | — |
| 1件あたりの受注額 | 100万円 | — |
| 必要な受注件数 | 年24件(月2件) | 2,400 ÷ 100 |
| 商談から受注への転換率 | 20% | — |
| 必要な商談数 | 月10件 | 2 ÷ 0.2 |
| 接触から商談への転換率 | 10% | — |
| 必要な接触数(担当者と話せた数) | 月100件 | 10 ÷ 0.1 |
| アプローチから接触への転換率 | 30% | — |
| 必要なアプローチ数 | 月約330件 | 100 ÷ 0.3 |
この例では、月に約330件、四半期で約1,000件のアプローチが必要になる計算です。同じ企業に複数回アプローチする場合は、必要な企業の数は、その分だけ少なくなります。
逆算で分かること
- リストの規模: 何社分のリストが必要かが分かります。足りなければ、市場を広げる必要があります。
- 活動量と体制: 1人の担当者が、1日に何件アプローチできるかと照らして、必要な人数が分かります。
- 目標の現実性: 必要な活動量が、現在の体制で実現できない場合は、目標、転換率の改善、体制のいずれかを見直す必要があります。
転換率が分からない場合は、まず仮の数字で計算し、実際の活動で得られた数字に、置き換えていきます。
市場とターゲット像の決め方
既存顧客から理想顧客像をつくる
ターゲット像は、想像ではなく、すでに受注できている顧客から作るのが確実です。既存顧客を見て、次の点を整理します。
- どんな業種、規模、地域の企業が多いか
- 導入のきっかけになった課題は何か
- 決裁に関わるのは、どの役職か
- 受注までの期間や、受注額に傾向はあるか
共通する条件を言葉にしたものが、理想の顧客像です。この条件を満たす企業を、リストの対象にします。
市場を4つの方向で整理する
新規開拓の市場は、「商品」と「市場」の組み合わせで整理すると、比較しやすくなります。
| 方向 | 内容 | 受注のしやすさ | 開拓の広がり |
|---|---|---|---|
| 既存商品 × 既存市場 | 既存顧客に似た企業に、同じ商品を広げる | 高い | 小さい |
| 既存商品 × 新市場 | 新しい業界・規模・地域に、同じ商品を届ける | 中 | 中 |
| 新商品 × 既存市場 | 既存顧客と同じ層に、新しい商品を提案する | 中 | 中 |
| 新商品 × 新市場 | 新しい商品を、新しい市場に届ける | 低い | 大きい |
最初は、受注しやすい「既存商品×既存市場」から着手し、結果を見ながら、新市場に広げるのが一般的です。目標に対して、既存市場だけでは社数が足りないなら、2つ目以降の方向も、候補に入れます。
市場や企業の選び方を、さらに詳しく知りたい方は、営業のターゲット選定とは?新規開拓で成果を出す市場・企業の決め方を徹底解説もご覧ください。
ターゲットリストを作り、優先順位を付ける
母集団(ターゲットリスト)と、実行用の一覧(アタックリスト)
リストは、2つの層に分けて考えると、運用しやすくなります。
- ターゲットリスト: 理想顧客像の条件に合う企業の、母集団です。数百から数千社規模になります。四半期ごとなど、条件を見直す頻度は、低めです。
- アタックリスト: 母集団から、優先度の高い企業を切り出した、実行用の一覧です。着手の順番と、活動の状況(未着手・接触済み・商談中など)を管理します。
母集団を作らずに、アタックリストだけを作ると、「手元にある名簿を、上から順に当てる」状態になります。まず、狙う母集団を定義することが大切です。
優先順位は、複数の観点で、根拠をつけて決める
リストの企業すべてに、同じ力で当たることは、現実的ではありません。優先順位を付けて、受注の見込みが高い企業から着手します。
優先度を決める観点の例は、次のとおりです。
- 自社の商品との相性(課題との適合)
- 企業の規模や業種が、理想の顧客像に近いか
- 既存顧客との類似度
- 接点を持ちやすいか(担当者や窓口の見つけやすさ)
- 導入の時期や予算の見込み
観点ごとに点数をつけて、合計で順位を付けると、「なぜその企業から当たるのか」を、説明できるようになります。属人的な勘ではなく、根拠のある優先順位にすることが、チームで運用するうえでも重要です。
リストの項目と、鮮度の管理
リストには、企業名や連絡先だけでなく、優先順位の判断や、アプローチの内容に使う情報も入れます。業種、規模、担当者の役職、課題の仮説、これまでの接触の履歴などです。
また、企業の情報や担当者は、変わります。リストは、作って終わりではなく、定期的に更新する前提で管理します。リストの管理の仕組みについては、入力が続かない原因と対策をまとめたCRMの入力が定着しない5つの原因と対策も参考になります。
なお、リストの情報の取得や、アプローチの方法には、個人情報の取り扱いや、営業の連絡に関する規制が関わる場合があります。法令や社内のルールを、事前に確認してください。
アプローチを設計する|手段・メッセージ・スケジュール
ターゲットと優先順位が決まったら、どの手段で、どんなメッセージを、いつまでに届けるのかを決めます。
手段を決める
電話、メール、DM、問い合わせフォームなど、手段ごとに、向いている相手や、かかる手間が違います。逆算で出した必要な件数を、1日・1週間で、無理なく実施できる手段の組み合わせにします。
メッセージを、ターゲットに合わせる
ターゲットの業種や課題に合わせて、伝える内容を変えます。全員に同じ文面を送るより、課題の仮説に沿った内容にしたほうが、反応は得やすくなります。電話の場合のトークの設計は、テレアポの成約率をAIトークスクリプトで底上げする方法で解説しています。
スケジュールと担当を決める
逆算した件数を、期間と担当者に割り振ります。いつまでに何件、誰が担当するのかが決まっていれば、進み具合を確認できます。
PDCAで見る指標と、見直しの頻度
アウトバウンド営業は、始めてから、数字を見て、直していくものです。最初に決めた転換率は仮のものなので、実際の数字で見直します。
見る指標
- アプローチ数: 計画どおりに、実施できているか
- 接触率: アプローチのうち、担当者と話せた割合
- アポイント(商談化)率: 接触のうち、商談につながった割合
- 受注率: 商談のうち、受注に至った割合
どこが課題かを切り分ける
数字を段階ごとに見ると、課題の場所が分かります。
- アプローチ数が足りない → 体制や手段を見直す
- 接触率が低い → 時間帯、窓口の見つけ方、リストの質を見直す
- アポ率が低い → メッセージ、トーク、ターゲットの合わせ方を見直す
- 商談化後の受注率が低い → 商談の準備や、提案の内容を見直す
商談の準備や、提案資料との整合については、商談台本と提案資料を一緒に作るAI活用のコツも参考になります。
見直しの頻度
活動の数字は、週に1回確認し、転換率や、ターゲットの条件は、月や四半期ごとに見直す、といった形で、頻度を決めておきます。見直しの日が決まっていないと、数字を見ないまま、活動だけが続いてしまいます。
AIで補助できること、人が決めること
戦略の設計は、AIが補助しやすい部分と、人が決めるべき部分に、分かれます。
| 内容 | |
|---|---|
| AIが補助すること | 市場やターゲット候補の整理・比較。観点ごとのスコアリングと、優先順位の根拠の整理。必要な活動量やスケジュールの試算。文面やトークの下書き。実績をもとにした、改善の提案 |
| 人が決めること | 売上目標と、狙う方向の判断。理想顧客像の最終確認。AIが出した優先順位と、プランの確認・調整。実際のアプローチと、顧客との対話。法令や社内ルールの確認 |
AIは、候補を出し、根拠を整理し、下書きを作る役割です。目標や方針を決めることと、最終的な判断は、人が行います。
AIを使うときは、元になる情報の質が前提になります。商品や既存顧客の情報が、正確でなければ、提案も的外れになります。結果は、そのまま信じず、自社の状況と照らして、確認してください。
営業のAI活用を、戦略・準備・商談・振り返り・育成の5つの工程で整理した記事は、営業にAIを活用する方法|商談準備から育成まで、5つの工程で整理で解説しています。
戦略設計を支える「ターゲット戦略くん」
DigitalWorksが提供する「ターゲット戦略くん」は、売上目標から逆算して、アウトバウンド営業の作戦を立てる「AI営業戦略社員」です。商品と既存顧客の情報を登録すると、攻めるべき市場とターゲット候補を整理し、優先順位をつけて、必要な活動量や実行プラン、文面までを設計します。
できることは、次のとおりです。
- ターゲット市場の整理・比較: 市場を、4つの象限で整理して、比較します。
- 優先順位付け: 9つの観点でスコアリングし、根拠つきで優先順位を示します。
- 実行プランの生成: 必要な対象数、チャネル、スケジュール、KPIを設計します。
- 文面・トークの作成と、改善の提案: 実績を入力すると、AIが改善案を示します。
対象数、スコア、逆算は、決まったロジックで算出するため、結果にブレがなく、根拠を説明できます。AIは、仮説づくりと、文章づくりを担当する、という役割分担です。
「売上目標はあるが、何社に当たれば届くのか分からない」「リストはあるが、優先順位に根拠がない」といった課題がある方は、ぜひ詳細をご確認ください。
まとめ|リストを作る前に、目標から逆算して戦略を決める
アウトバウンド営業は、リストを作る前に、目標、市場、ターゲット像、アプローチ手段の4つを決めます。売上目標から、受注件数、商談数、接触数、アプローチ数と、さかのぼって計算すると、必要なリストの規模と活動量が、見えてきます。
ターゲットは、既存顧客から理想顧客像をつくり、市場を整理して選びます。リストは、母集団とアタックリストの2層で考え、優先順位は、複数の観点で、根拠をつけて決めます。実行したあとは、数字を段階ごとに見て、課題の場所を切り分け、定期的に見直します。
AIは、候補の整理、根拠の整理、下書きの作成を補助します。目標と方針、最終的な判断は、人が行います。まずは、自社の売上目標から、必要なアプローチ数を、仮の数字で計算してみるところから始めてみてください。
アウトバウンド営業の戦略に関するよくある質問
Q1. アウトバウンド営業の戦略は、何から決めればよいですか? A. まず、売上目標を決め、そこから必要な受注件数、商談数、接触数、アプローチ数を、逆算します。必要な活動量が分かると、リストの規模や、体制の見直しが具体的になります。
Q2. 営業リストは、何社分あればよいですか? A. 売上目標と、各段階の転換率から逆算して決めます。同じ企業に複数回アプローチする場合は、必要な企業の数は、その分だけ少なくなります。転換率が分からない場合は、仮の数字で計算し、実際の数字に置き換えます。
Q3. ターゲットの優先順位は、どう決めればよいですか? A. 自社の商品との相性、既存顧客との類似度、接点の持ちやすさなど、複数の観点で点数をつけ、合計で順位を付けます。根拠が説明できる形にすると、チームでの運用もしやすくなります。
Q4. AIに営業戦略を任せても、大丈夫ですか? A. AIは、市場やターゲット候補の整理、優先順位の根拠の整理、文面の下書きなどを補助します。目標や方針の決定、最終的な判断は、人が行う必要があります。元の情報の質にも、結果が左右されます。
Q5. 転換率が分からないときは、どうすればよいですか? A. まず、仮の数字で、必要な活動量を計算します。実際に活動を始めたら、段階ごとの数字を記録し、仮の数字を、実績に置き換えて、計画を見直します。